STP分析とは?やり方やメリット、他フレームワークとの組み合わせをわかりやすく解説!

マーケティング施策を考える上では、誰に、何を、どのように届けるのかを明確にする必要があるが、市場や顧客の捉え方が曖昧なまま施策を進めてしまうことも少なくなく、広告や営業活動にコストをかけたにも関わらず成果に繋がらないこともある。

STP分析とは、市場を細分化し、狙うべき顧客層を定め、自社の提供価値を競合との違いの中で明確にするフレームワークである。STP分析を活用すれば、ターゲットや訴求軸が整理され、マーケティング施策の精度を高められる。

本記事では、STP分析の基本となる要素やメリット、分析のやり方、他フレームワークとの組み合わせまでわかりやすく解説する。

STP分析とは?

STP分析とは、市場を構造的に捉え、自社が狙うべき顧客層と競争上の立ち位置を明確にするマーケティングフレームワークで、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ったものだ。

また、STP分析は1970年代から1980年代にかけてフィリップ・コトラー氏らによって広く体系化され、マーケティングの基本手法として定着しはじめた。現代では、広告や商品開発、営業戦略の方向性を定め、施策の精度を高めるうえで重要な考え方となっている。

STP分析における3つの要素

STPにおける3つの要素、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)についてそれぞれ詳細に解説する。

セグメンテーション(Segmentation)

セグメンテーション(Segmentation)は、市場を共通のニーズや属性をもつグループごとに細分化し、明確なセグメントとして整理するプロセスである。

分類の具体例としては、エリアや都市規模、気候条件などの「地理的変数」、年齢、性別、職業、収入などの「人口動態変数」、性格、ライフスタイル、興味、購買動機などの「心理的変数」、購入履歴、閲覧履歴、開封率、利用頻度などの「行動変数」が用いられる。

分類説明変数例
地理的変数
(ジオグラフィック)
国、地域、気候など、位置情報や空間的な特徴で分ける基準国・地域国内(関東、関西、九州)、海外(北米、アジア、欧州)
都市の規模大都市圏(人口100万人以上)、地方都市、郊外、農村部
人口密度過密(東京23区)、普通、過疎
気候寒冷地(北海道)、温暖地、亜熱帯(沖縄)、豪雪地帯
居住環境一戸建て中心エリア、タワーマンション街、学生街、商業地
人口動態変数
(デモグラフィック)
年齢や性別など、客観的な個人の属性で分ける基準性別男性、女性、ノンバイナリー(ジェンダーレス)
年齢・年代Z世代(10〜20代前半)、ミレニアル世代、シニア層(65歳以上)
ライフステージ未婚独身、既婚子なし、DINKS、子育て中、未就学児の親
職業会社員、公務員、経営者、専門職、主婦・主夫、学生、リタイア層
所得(年収)低所得層、中間層、富裕層(1000万円以上)、超富裕層
学歴高卒、大卒、大学院卒
心理的変数
(サイコグラフィック)
価値観や性格など、消費者の内面やライフスタイルで分ける基準ライフスタイルインドア派、アウトドア派、健康志向、ミニマリスト、夜型
パーソナリティ内向的、社交的、保守的、革新的(新しいもの好き)
価値観・購買意向コスパ重視、タイパ重視、ブランド志向、環境配慮(サステナブル志向)
趣味・関心アニメ・ゲーム、美容・コスメ、投資・資産運用、サウナ、旅行
行動変数
(ビヘイビアル)
製品に対する知識、態度、購入履歴などの行動パターンで分ける基準購買状況(頻度)初めて(新規)、たまに(ライトユーザー)、頻繁に(ヘビーユーザー)
ロイヤルティ(忠誠度)なし(価格で乗り換える)、中程度、高い(信者・ファン)
求める便益(ベネフィット)機能性、デザイン性、ステータス、安心・安全
購入の契機(タイミング)日常使い、通勤時、記念日・イベント、自分へのご褒美
検討段階製品を知らない、知っているが迷っている、購入を決意している

ただし、細かく分けること自体が目的ではなく、優先順位をつけられるかを示すRank、十分な売上や利益が見込めるかを示すRealistic、広告や商品を届けられるかを示すReach、反応や効果を測定できるかを示すResponseの4Rを確認し、有効な単位として設計することが重要だ。

ターゲティング(Targeting)

ターゲティング(Targeting)は、細分化された市場の中から、自社の強みや経営資源を最も活かせる顧客層を選定するプロセスである。

人材や予算、技術など企業が保有するリソースは限られており、すべての顧客層に対応することは現実的ではないため、売上規模や成長性、収益性といった市場・顧客の魅力度、競合の強さや参入余地、自社の理念、技術、ノウハウ、販売ルートといった総合的な視点から評価する必要がある。

評価項目確認するポイント
市場・顧客の魅力度市場規模十分な売上をあげるだけの顧客数がいるか
成長性その市場は今後拡大するか、縮小するか
収益性顧客の購買力は高いか、適切な利益率を確保できるか
競合の状況競合の強さすでに強力なトップ企業が君臨していないか
参入障壁後発として入る隙間やニッチなニーズはあるか
自社の経営資源経営理念との合致自社のブランドイメージやビジョンに合うか
強みの活用の可否自社の技術、ノウハウ、資金力、販売ルートを活かせるか
シナジー効果既存事業との相乗効果が見込めるか

また、代用的な市場へのアプローチには、単一の領域に集中する方法、特定製品を複数市場に展開する方法、特定顧客層に幅広い製品を提供する方法、複数の有望市場を選ぶ方法、全市場を網羅する方法がある。

名称概要
単一セグメント集中
ニッチ戦略
1つの特定のセグメントだけに全資源を集中させる
製品専門化特定の製品を、あらゆる市場・セグメントに提供する
市場専門化特定の顧客層に対して、必要なあらゆる製品を提供する
選択的専門化関連性の薄い複数の魅力的なセグメントを、個別に選んで攻める
全市場網羅
フルカバー
すべてのセグメントに対して、それぞれに合う製品を提供する

なお、実務では、広く狙うマス型と絞り込むニッチ型の特徴を踏まえ、成果につながる対象を見極めることも重要だ。

無差別型マーケティング集中型マーケティング
やり方市場全体、または複数の大きなセグメントを同時に狙うターゲットを極限まで絞り込み、理想の顧客像であるペルソナを設定する
メリット大量生産・大量販売によるコスト削減、つまり規模の経済が効く顧客に「これは自分のための商品だ」と強く刺さり、SNSで拡散されやすい
デメリット資金力のある大企業でないと成立しにくい市場が小さすぎると、ビジネスとしてスケールしにくい
向いている企業大企業、全国展開している企業、広告予算が大きい企業中小企業、スタートアップ、専門性や独自性のある企業
向いている商品・サービス日用品、食品、飲料、家電など、多くの人に必要とされるもの専門商品、高価格帯商品、趣味性の高い商品、特定の悩みを解決するサービス

ポジショニング(Positioning)

ポジショニング(Positioning)は、自社の商品やサービスを市場の中でどのような存在として認識してもらうかを定義するプロセスである。

競合と同じ土俵で価格競争に巻き込まれないために、顧客が自社を選ぶ理由を明確にし、独自の立ち位置を築くことが目的となる。その中で重要なのが、競合には模倣しにくい独自の強みを示す「POD(Point of Difference:差別化点)」と、市場で選択肢に入るために最低限満たすべき共通要素である「POP(Point of Parity:同等点・類似点)」の整理である。

差別化の軸には、機能や技術、価格と品質、顧客が得られる便益、利用シーン、ユーザー層、競合の弱点を突く立ち位置などがあげられる。

訴求軸内容ポイント
属性・機能商品が持つ特定の機能、技術、成分などを訴求する「何ができる商品なのか」をわかりやすく伝える
価格と品質価格に対する価値、または圧倒的な高級感を訴求するコスパの良さや、高品質・高級感を強調する
顧客ベネフィットその商品を使うことで、顧客が得られる未来や利益を訴求する「使うとどう良くなるのか」を具体的に見せる
用途・機会いつ、どんなシチュエーションで使うかに特化して訴求する利用シーンを明確にして、必要性を感じてもらう
ユーザー層どのような人向けかを絞り込んで訴求する「これは自分向けの商品だ」と感じてもらう
対競合
(カウンター)
業界トップ企業の弱点を突き、その逆の立ち位置を取る競合との違いを明確にし、独自の選ばれる理由を作る

顧客にとって価値があり、かつ一貫した認識を形成できれば、広告、商品開発、販売戦略にも統一感が生まれ、持続的な競争優位を築きやすくなる。

STP分析のメリット・重要性

STP分析は、マーケティング戦略の精度を高めるうえで重要な役割をもつ。ここでは、STP分析によって得られる主なメリットを3つ紹介する。

ターゲットやニーズが明確になる

STP分析を行う1つ目のメリットは、ターゲットやニーズを明確にできる点である。

漠然とした顧客全体を対象にすると、商品やサービスの価値を誰に向けて伝えるべきかが曖昧になり、結果として訴求内容も一般的なものにとどまりやすい。STP分析では、市場を整理したうえで自社が向き合うべき顧客像の欲求、課題、購買動機を把握するため、訴求も具体的になりやすい。

例えば、同じ健康食品でも、忙しく働くビジネスパーソンと美容意識の高い若年層では求める価値が異なる。前者には手軽さや栄養補給、後者には美容効果やブランド性が重視される。誰に価値を提供するのか、その顧客は何を求めているのかを明確にすることで、商品設計や訴求内容の方向性が定まり、顧客に届きやすいマーケティング施策を実行できる。

競合との不必要な消耗戦を避けられる

STP分析を行う2つ目のメリットは、不必要な消耗線を回避できる点である。

市場全体を広く狙おうとすると、すでに強い企業がいる領域で価格や機能を比較されやすくなり、利益率の低下や広告費の増加を招きやすいため、自社が勝負すべき領域を絞り込み、市場内での立ち位置を明確にすることが重要である。

例えば低価格を強みとする競合が多い市場であれば、品質、専門性、サポート体制、ブランド体験など別の価値軸を打ち出すことで、単純な価格比較から距離を置ける。これにより、商品開発、販売方針、メッセージに一貫性が生まれ、自社ならではの強みを磨き込みやすくなる。

結果として、競合に合わせて施策を変え続ける状態から脱し、持続的な優位性を築きやすくなる。

プロモーションの精度と効率が上がる

STP分析を行う3つ目のメリットは、プロモーションの精度と効率を高められる点だ。

訴求すべき相手と伝えるべき価値が整理されるため、広告媒体、配信チャネル、コピー、クリエイティブの方向性を決めやすくなる。例えば、若年層向けの商品であればSNSや動画広告を重視し、法人向けの高単価サービスであればホワイトペーパーやウェビナーを活用するなど、接点の設計を最適化できる。

それにより、関心が低い層へ広く広告を出すのではなく、購買可能性の高い層に絞って情報を届けられるため、無駄な広告費や営業工数を抑えやすい。また、訴求内容と顧客の関心が合いやすくなることで、クリック率、問い合わせ率、成約率の改善にもつながる。結果として、マーケティングコストの最適化と成果の最大化を両立しやすくなる。

STP分析を行う際の注意点

STP分析は、正しく進めなければ机上の整理で終わる可能性がある。実践で成果につなげるために押さえるべき注意点を4つ紹介する。

細分化しすぎない

1つ目に注意すべきことは、市場を細分化しすぎないことだ。細かく分けるほど顧客像は具体的になるが、過度に狭めると対象となる市場規模が小さくなり、十分な売上や利益を確保できない恐れがある。

例えば年齢、地域、職業、趣味、購買頻度などを必要以上に掛け合わせると、条件に合う顧客数が限られ、広告や商品開発にかけたコストを回収しにくくなる。一方で、分類の粒度が粗すぎる場合も問題である。同じグループ内に異なる目的や課題をもつ顧客が混在し、結果として誰にも深く響かない価値提案になりやすい。

重要なのは、事業として十分な規模を保ちながら、共通したニーズを見いだせる単位で分類することであり、適切な粒度を見極めることで、メッセージの訴求力と施策の精度を高めやすくなる。

顧客視点を取り入れる

2つ目に注意すべきことは、顧客の視点を取り入れることだ。

自社が売りたい商品や想定した仮説だけを起点にしてしまうと、実際の購買理由や判断基準とのズレが生じやすい。顧客は単に年齢、性別、職業、収入といった属性だけで行動しているわけではなく、価値観、利用シーン、解決したい課題、購入後に得たい体験によって意思決定している。

例えば、同じ30代会社員でも、時短を重視する人と品質やデザインを重視する人では、同じ商品に求める価値が大きく異なる。そのため、アンケート、インタビュー、購買データ、問い合わせ内容、Web上の行動履歴などをもとに、顧客が何に悩み、何を魅力と感じるのかを把握する必要がある。

S・T・Pに一貫性をもたせる

3つ目に注意すべきことは、S・T・Pに一貫性をもたせることである。

セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを別々の作業として進めると、分析結果と施策がつながらず、戦略全体の説得力が弱くなる。例えば、価格を重視する顧客層を想定しているにもかかわらず、高級感や希少性を前面に出した訴求を行えば、顧客に伝わる価値がずれてしまう。

重要なのは、どの市場をどう捉え、どの顧客層に向き合い、どのような価値を提供するのかを一つの流れとして設計することだ。このつながりが明確であれば、商品設計、価格設定、販売チャネル、広告メッセージが同じ方向にそろいやすくなり、結果として、顧客が接するあらゆる場面で一貫した印象を形成できる。

「6R」でターゲットの妥当性を意識する

4つ目に注意すべきことは、設定したターゲットの妥当性を6Rで確認することだ。

6Rとは、狙うべき市場を評価するための観点であり、市場規模を示す「Realistic scale」、成長性を示す「Rate of growth」、競合状況を示す「Rival」、優先度を示す「Rank」、到達可能性を示す「Reach」、反応や効果を測れるかを示す「Response」で構成される。

例えば、市場規模が小さすぎれば十分な売上を見込みにくく、成長性が低ければ長期的な拡大も期待しにくい。また、競合が強すぎる市場では参入後の利益確保が難しくなる。さらに、自社にとって優先度が高いか、広告や営業で顧客に接触できるか、施策の成果を測定できるかも確認する必要がある。

6Rを用いることで、感覚や思い込みに頼らず、事業として成立しやすいターゲットを選びやすくなる。

STP分析のやり方・進め方

STP分析は、感覚ではなく手順に沿って進めることで精度が高まる。ここでは、実践にそったSTP分析の進め方を紹介する。

市場データの収集・分析

STP分析における最初のステップは、市場データの収集と分析である。

データ収集や市場分析を主観的な仮説や過去の経験だけに頼ると、実態を見誤る可能性があるだけでなく、後続の分析精度を大きく下げる恐れがある。そのため、既存顧客の購買データ、問い合わせ履歴、業界レポート、競合情報などの二次情報に加え、アンケート調査やインタビュー調査で得られる一次情報も収集する必要がある。

また、Webサイトのアクセスログ、検索キーワード、SNS上の反応、広告配信データなどを確認すれば、顧客が何に関心を持ち、どのような行動を取っているかを把握しやすい。重要なのは、複数のデータを照らし合わせ、事実に基づいて市場の構造や顧客の傾向を理解することだ。

セグメントの分類を行う

次のステップは、セグメントの分類である。

代表的なセグメント(分類)軸には、地域や気候、都市規模などの「地理的変数」、年齢、性別、職業、収入などの「人口動態変数」、価値観、ライフスタイル、購買動機などの「心理的変数」、購入頻度、利用状況、閲覧履歴などの「行動変数」があり、これらを単独で見るのではなく、複数の軸を掛け合わせることで、顧客ごとの違いや共通点をより具体的に把握できる。

ただし、分類は細かければよいわけではない。過度に細分化してしまうと、対象が狭くなりすぎて実務で扱いにくくなる。一方で、分類が粗すぎると異なるニーズをもつ顧客が混在し、有効な戦略につながりにくい。複数の変数を組み合わせつつも、市場規模とのバランスを取ることが重要だ。

ターゲットを決める

続いてのステップは、ターゲットの設定だ。ターゲットを決める工程では、自社が最も価値を提供でき、かつ事業として成立する顧客層を選定することが重要である。

近年は顧客ニーズが細かく分かれており、すべての人が魅力的だと感じる商品やサービスを設計することは現実的ではない。そのため、自社の商品特性、技術、ノウハウ、ブランドとの相性を踏まえ、最もフィットする顧客層を見極める必要がある。

例えば、高機能で価格が高い商品であれば、価格の安さよりも品質や専門性を重視する顧客層のほうが適している。反対に、手軽さや低価格を強みとする商品であれば、購入頻度や利便性を重視する顧客層と相性がよい。

ポジショニングの選定

セグメントとターゲットが決まったら、次はポジショニングの選定に移る。

ポジショニングの選定では、自社がどのような価値を提供する存在なのか、他社と何が異なるのかを明確にすることが重要である。単に強みを並べるのではなく、顧客の購買意思決定に影響を与える要素を軸にして、市場内での位置づけを設計する必要がある。

代表的な評価軸には、価格、品質、機能性、利便性、デザイン性、ブランドイメージ、サポート体制などが用いられることが多く、「価格の安さ」と「品質の高さ」、「専門性」と「使いやすさ」といった相反する軸を設定することで、自社と競合の違いを比較しやすくなる。

マーケティング戦略への落とし込み

セグメント、ターゲット、ポジショニングの3つを連動させた上で策定が完了したら、マーケティング戦略へと落とし込むステップとなる。

マーケティング戦略への落とし込みでは、STP分析で得られた示唆を、商品設計、価格設定、販売チャネル、販促施策などの具体的な実行内容に反映することが重要だ。分析結果があっても、実際の施策に結びつかなければ成果にはつながらない。

例えば、高付加価値を重視する顧客層に向ける場合、商品には品質や使いやすさ、購入後の体験価値を反映し、価格もその価値に見合う水準に設定する必要がある。また、販売チャネルは顧客が情報収集や購入をしやすい接点を選び、広告や営業メッセージも価値が正しく伝わる内容に整えることが求められる。

各施策が同じ方向を向くことで、顧客に伝わる印象がぶれにくくなり、戦略の実効性を高められる。

継続的なSTPの見直し

最後に、継続的な見直しも欠かせない。

特に近年は、テクノロジーの進化や消費者行動の変化だけでなく、競合他社の新規参入や法規制、流通構造の変化などにより、市場の状況が短期間で変わりやすい。過去に有効だった顧客設定や価値訴求が、現在も同じように機能するとは限らない。

そのため、広告の反応率、問い合わせ内容、購買データ、解約率、顧客満足度、市場トレンドなどを定期的に確認し、想定していた顧客像や提供価値が現実と合っているかを評価する必要がある。変化の兆候が見えた場合は、前提条件を見直し、必要に応じて定義を更新することで、戦略の鮮度を保ち、成果につながる判断を継続しやすくなる。

STP分析の前後に組み合わせたいフレームワーク

STP分析は単独でも有効だが、前後の工程に適したフレームワークと組み合わせることで精度が高まる。ここでは、おすすめのフレームワークを紹介する。

状況を整理する【STPの前】

状況を整理するSTPの前段階では、自社を取り巻く環境や市場の前提を把握することが重要であり、そこで有効なのが、3C分析、PEST分析、SWOT分析である。

分析手法分析視点目的
3C分析顧客(Customer)
競合(Competitor)
自社(Company)
市場環境や自社の立ち位置を整理する
PEST分析政治(Politics)
経済(Economy)
社会(Society)
技術(Technology)
自社ではコントロールしにくい外部環境の変化を把握する
SWOT分析強み(Strength)
弱み(Weakness)
機会(Opportunity)
脅威(Threat)
事業の現状を整理し、戦略の方向性を考える

具体的な施策に落とし込む【STPの後】

一方で、具体的な施策に落とし込むSTPの後段階では、定めた顧客像や提供価値を実際のマーケティング活動に反映することが重要なため、4P分析、4C分析、カスタマージャーニーマップが有効だ。

手法整理する項目何を考えるためのものか
4P分析製品(Product)
価格(Price)
流通(Place)
プロモーション(Promotion)
企業側の視点で、商品をどう売るかを整理する
4C分析Customer Value(顧客価値)
Cost(お金・時間・手間)
Convenience(買いやすさ・利便性)
Communication(顧客接点)
顧客側の視点で、商品が選ばれる理由を整理する
カスタマージャーニーマップ認知
興味・関心
比較・検討
購入
継続・ファン化
ターゲットが商品を知ってから購入し、ファンになるまでの感情や行動の流れを可視化する

STP分析の企業事例

最後に、STP分析を活用した企業事例について紹介する。

ユニクロ

ユニクロは、ファーストリテイリンググループの中核ブランドであり、LifeWearの考え方にもとづき、高品質で機能的な日常着を手頃な価格で提供するアパレルブランドである。

STP分析の観点では、年齢や性別だけで市場を分けるのではなく、トレンド志向かベーシック志向か、カジュアルかフォーマルかといった価値観やニーズを軸に顧客を捉えている。ターゲットは、流行性よりも実用性、品質、汎用性を重視する幅広い層である。

ポジショニングでは、高品質でありながら手頃な価格のベーシックウェアを提供する立ち位置を確立し、ファストファッションや高価格帯ブランドとは異なる独自性を築いている。

項目内容
セグメントトレンド志向かベーシック志向か、カジュアルかフォーマルか。
ターゲット流行性よりも、実用性・品質・汎用性を重視する幅広い層。
ポジション高品質でありながら手頃な価格のベーシックウェアを提供する立ち位置。
ファストファッションや高価格帯ブランドとは異なる独自性を持つ。

スターバックス

スターバックスは、米国シアトル発のコーヒーチェーンであり、コーヒーそのものだけでなく、店舗空間や接客を含めた体験価値を提供するブランドとして市場を捉え直した点が特徴である。

セグメンテーションでは、年齢や性別だけでなく、ライフスタイル、価値観、利用シーンといった心理的・行動的要因を重視している。ターゲティングでは、単にコーヒーを飲む場所ではなく、自分らしく過ごせる快適な空間を求める顧客層を主軸に据えている。

ポジショニングでは、自宅でも職場でもないサードプレイスという独自の立ち位置を確立し、商品、空間、サービスを一体化したブランド価値を形成している。

項目内容
セグメント年齢や性別だけでなく、ライフスタイル・価値観・利用シーンで市場を分ける。
ターゲットコーヒーだけでなく、自分らしく過ごせる快適な空間を求める顧客層。
ポジション自宅でも職場でもない「サードプレイス」としての立ち位置。
商品・空間・サービスを一体化したブランド価値を提供する。

ニトリ

ニトリは、家具・インテリア用品の企画、開発、販売を中心に、法人向け事業やリフォーム事業も展開する企業で、STP分析の観点では、価格と生活価値の両立を軸に市場ポジションを築いた事例といえる。

セグメンテーションでは、年齢や世帯構成に加え、一人暮らし、子育て、シニア世帯、引越しや結婚などのライフイベントを踏まえ、生活シーンごとの需要を捉えている。ターゲティングでは、新生活の需要をもつ若年層やファミリー層を中心にしつつ、ライフステージの変化に応じた幅広い顧客にも対応している。

ポジショニングでは、お、ねだん以上。に象徴されるように、手頃な価格で生活全体の利便性やコーディネート価値を提供する立ち位置を確立している。

項目内容
セグメント年齢や世帯構成に加え、一人暮らし・子育て・シニア世帯・引越し・結婚などのライフイベントで市場を分ける。
ターゲット新生活の需要がある若年層やファミリー層を中心に、ライフステージが変化する幅広い顧客。
ポジション「お、ねだん以上。」に象徴される、手頃な価格で生活全体の利便性やコーディネート価値を提供する立ち位置。

まとめ

STP分析は、市場を理解して自社の立ち位置を明確にするのに欠かせないフレームワークだ。セグメンテーションで市場を捉え直し、ターゲティングで狙うべき顧客を定め、ポジショニングで提供価値を定義することで、マーケティング戦略は具体性と一貫性を帯びていく。

また、SWOT分析や4P分析といったフレームワークと組み合わせることで、戦略の精度と実行力はさらに高まるだろう。ただし、STP分析で得られた結果は、あくまで「現状の整理」と「方向性の定義」だ。分析で明確になった示唆をどう施策や意思決定に落とし込むかが重要であることを忘れてはならない。

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