FMEAシートは作成したものの、レビューでは「この故障モードは抜けていないか」「この対策で十分なのか」と何度も差し戻される。設計者なら、一度はそんな経験があるのではないだろうか。
FMEAのフォーマットは、多くの企業で長年ほとんど変わっていない。項目も並び順もほぼ標準化されている。それにもかかわらず、出来上がるFMEAの質には、担当者によって歴然とした差が出る。
この差は、センスや経験年数だけで説明できるものではない。経験豊富な設計者の頭の中には、故障モードを書き始める前から、自然と確認している着眼点がある。その着眼点は、「何を疑い、何を確認し、どこまで掘り下げるか」という問いとして表れる。
これまで数多くの製造業のお客様と対話する中で見えてきた、現場に共通する視点や工夫をもとに、その「着眼点」を整理してみたい。
1. 最初に着目するのは「変更の影響範囲」
教科書的なFMEAは、構成要素を分解し、機能を整理し、故障モードを洗い出す手順で説明される。一方、実際の開発現場では、新規設計よりも既存製品の設計変更や仕様変更に伴ってFMEAを見直す場面の方が圧倒的に多い。
経験豊富な設計者は、材料変更や寸法変更、部品置換などの変更を目にすると、次のように思考を広げていく。
- この変更は周辺部品へ影響しないか
- 使用環境が変わったとき問題は起きないか
- 安全性や信頼性に新たなリスクは生まれないか
一方で経験の浅い担当者は、変更箇所そのものに意識が集中しやすく、影響範囲を局所的に捉えてしまうことが少なくない。
本当に重要なのは、変更を確認することではなく、変更が生み出す影響をどこまで想像できるかなのである。
2. 故障モードを原因まで掘り下げる
FMEAのレビューというと、故障モードの抜け漏れを確認する作業だと思われがちだ。しかし実際にレビューで信頼されるFMEAとそうでないFMEAの違いは、項目数ではない。
ベテランは故障モードを書いたあと、必ず次のような問いを繰り返す。
- なぜ起きるのか
- 起きたとき、どんな影響があるのか
- 本当にこの原因だけなのか
- この故障は本当に検出できるのか
さらに、是正案についても、次のような問いを重ねながら判断している。
- なぜこの対策なのか
- 本当にOccurrenceは下がるのか
- 過去の不具合や検証結果は裏付けになっているか
3. 既存のFMEAを鵜呑みにしない
教科書ではFMEAをゼロから作る前提で説明されている。しかし実務では、既存のFMEAを土台に差分更新することがほとんどである。この進め方は効率的だが、一方で「前回もこうだったから」という思考停止にもつながりやすい。
ベテランは既存FMEAを参考にしながらも、次のように土台そのものにも疑問を投げかけている。
- この故障モードは今でも成立するか
- 新しい材料や工法で前提は変わっていないか
- 評価基準は古くないか
4. 着眼点を組織の知識に変える
現場で高く評価される設計者は、結論だけではなく、なぜその判断に至ったのかも周囲に共有している。
「ここは過去に問題になった」
「この変更では必ずここを見る」
「この故障モードならこの原因も疑う」
こうした判断の背景は、暗黙知のままでは次の担当者へ受け継がれない。
備忘録ではなく、どのような根拠でその判断に至ったのかまで残されているFMEAは、単なる帳票ではなく、組織の知識資産になる。
経験豊富な設計者の価値は、答えを知っていることだけではない。その着眼点や判断の根拠を組織に残せることにある。そうした知見が蓄積されることで、FMEAは個人技ではなく、組織の設計品質を支える資産になっていく。
FMEAレビューを、「抜け漏れの確認」から「設計判断の議論」へ
FMEAの価値は、シートを埋めることではない。
本当に価値があるのは、故障モードや対策の候補をもとに、設計者同士が議論を重ね、リスクを評価し、設計判断を下すことにある。
例えば、
- このリスクは本当に受容できるのか
- この対策で十分なのか
といった議論を通じて設計品質を高めていくことこそが、FMEAの本質である。
しかし実際のレビューでは、こうした議論に入る前に、多くの時間が費やされている。
「なぜこの故障モードが抜けているのか」
「なぜこの対策では不十分なのか」
こうした指摘は、本来であれば経験を積む中で身についていく着眼点だが、レビューのたびに一からリーダーが言語化し、伝え直さなければならないのが実情である。結果として、着眼点を揃えることに時間を取られ、本来最も時間をかけるべき設計判断そのものの議論が、後回しになりやすい。
Aconnectで、網羅的なFMEAドラフトを短時間で
この課題に対して、ストックマークではAconnectの「FMEAエージェント」を開発している。
設計図やP&ID、過去FMEA、不具合情報、設計標準などを活用し、ベテランが自然と行っている着眼点(変更影響の想定、原因の掘り下げ、既存の型への疑い)をあらかじめ組み込んだ形で、AIがFMEAのドラフトを作成する。
担当者はそのドラフトをもとにFMEAを仕上げ、リーダーは、着眼点がすでに揃った土台の上で、本来集中すべき設計判断やリスク評価の議論にレビューの時間を充てられるようになる。
設計品質を決めるのは、最後の判断を下す設計者とリーダーだ。AIが担うのは、チーム内の着眼点を揃え、設計者とリーダーが本質的な判断に集中できる土台をつくることである。
Aconnectの「FMEAエージェント」が、どのような情報を参照し、どのような流れでFMEAのドラフトを作成するのか。
資料では、実際の業務への組み込み方や活用ステップを紹介している。
FMEAレビューの負担を減らしながら、チーム全体の着眼点を揃える方法を検討する際に、ぜひご活用いただきたい。
Aconnect FMEAエージェント 機能詳細・活用事例をダウンロードする
